第16回 電撃大賞 入賞作品

選考委員奨励賞
「空の彼方」
作/菱田愛日 (東京都)



受賞作品

メディアワークス文庫

空の彼方

不思議な防具屋を舞台にした優しいファンタジー。
あなたも [シャイニーテラス] を訪れてみませんか?


著者  : 菱田愛日
定価  : 599円(税込)
発売日  : 2010年1月25日
備考  : A6判/338ページ
ISBN  : 978-4-04-868289-3




選考委員選評
高畑京一郎
舞台を一つの店だけに限定し、そこから世界を透かし見せる構成は面白い。 しかし、キャラクターの書き分けが不充分で、似たようなシーンを何度も読まされる事になるのがつらい。また、エピソード間の時間経過を様々な形で描写できれば、物語の大きなうねりを演出でき、また世界全体を生きたものにできた筈で、そのあたりが勿体ないと思った。

時雨沢恵一
ほとんどのシーンが、主人公の営む防具店での語りや手紙という展開は、個人的にかなり好きです。文章も綺麗でした。ラスト、あの防具の持ち主は本当に死んでいるのかとても気になります。

佐藤竜雄
主人公である店主はひたすら店で客を待っている。馴染みの客の口から情報はもたらされ、物語も様々な語り口で上書きされ、追加され進んでいく…… こういうスタイルは結構好み。それだけに終盤の畳みかけがちょっと長引いてしまったのが惜しい。あと、アルフォンスの傭兵としての成長が、もう少し意識して描かれていれば、主人公の「待ち続ける」時間の長さというものがもっと感じる事が出来たと思う。それはそのまま主人公の成長でもあるから。

豊島雅郎
「何かを待つ」主人公ソラの想いに心打たれる。筆者は、読む者をグイグイと引き込む才能があるのではなかろうか!? 正直なところ、初見では、凡庸なレジスタンスものSFファンタジーだと感じたが、二回目読み直してみた時に、アニメ・ゲーム世代の若者を中心に受け入れられる作品ではなかろうかと思い直しました。筆者の次の作品も、ぜひ読んでみたい!

鈴木一智 (取締役・第2編集部 統括編集長)
最初は典型的なRPG系ファンタジーかと思っていたのですが、防具屋を営む少女の元を訪れる冒険者たちの証言から一つの物語が浮かび上がり、それが最後にヒロインの思い人に繋がるという構成は良い意味で意表を突かれました。またヒロイン自身をストーリーテラーにしない事で物語が必要以上に湿っぽくならず、全体として心に染みるテイストが演出されています。派手さは無いものの、女性らしい感性が上手く投影された作品と言えるでしょう。

プロフィール
1985年の梅雨時、東京都と埼玉の境目あたり(ギリギリ東京)で誕生。その後埼玉で育ち(ギリギリ埼玉)、現在は東京在住。中学の時から何故か “姉さん” の称号を友人から賜る。高校卒業後2年程ウロウロした後、現在は都内某所で某アパレルブランドの店長をしているらしい。販売員のくせに、買い物は滅多に行かない。休日は基本、家で引きこもる。幸せな瞬間は二度寝する時。ストレスの発散はもっぱら妄想。…… あれ? もしかして私って根暗ですか?

あらすじ
王都・レーギスの中心部からはずれた路地に、隠れるようにある防具屋 [シャイニーテラス]。
陽の光が差し込まない店内に佇むのは、女主人・ソラ。

彼女の店には、訪れる客と必ずある約束をかわすルールがある。 それは、生きて帰り、旅の出来事を彼女に語るというもの。

店から出ることのできないソラは、旅人の帰りを待つことで彼らと共に世界を旅し、戻らぬ幼なじみを捜していた。

ある日、自由を求め貴族の身分を捨てた青年・アルが、店を訪れる。
彼との出会いが、止まっていたソラの時間を動かすことになり――。

これは、不思議な防具屋を舞台にした、心洗われるファンタジー。



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