第16回 電撃大賞 入賞作品

金賞
「ヴァンダル画廊街の奇跡」
作/美奈川護 (埼玉県)



受賞作品

電撃文庫

ヴァンダル画廊街の奇跡

絵画を瞳に宿す少女・エナ。
彼女が秘めた、願いと想いは──。


著者  : 美奈川護
イラスト  : 望月朔
定価  : 599円(税込)
発売日  : 2010年2月10日
備考  : A6判/328ページ
ISBN  : 978-4-04-868324-1




選考委員選評
高畑京一郎
絵を描く反政府行動という設定と、連作短編風の構成は面白い。残念なのは、折角のSF的ガジェットが有効に使われていない点。それらが存在する事で、人々の日々の暮らしがどう変わってくるのか、その部分の練り込みが足りないので、リアリティが感じられず、逆にこの作品の中で浮いてしまってさえいるように感じた。

時雨沢恵一
芸術をモチーフに、数々の名画をちりばめた展開が綺麗だったと思います。今回もっとも主人公達が移動していた話でもあり、印象に残りました。キャラクターはどれも個性的で好きですが、個人的には脇役のゲティスバーグ捜査員側が実にいい味を出していて気に入りました。彼等が主役の話も読んでみたいです。

佐藤竜雄
未来世界を舞台にしているが、人の心の中にある「ビジョン」を「絵画」 に託したおとぎ話。そう考えれば、社会のシステムや交通システムなど突っ込まざるを得ない設定も気にならない。とはいえ、ヒロインの父親が殺される理由がいまいち納得のいかないのが困りもので、捜査官コンビなど脇役のキャラが良いだけに、肝心の主人公側が設定に振り回された感があり残念。

豊島雅郎
設定は個人的に好みでしたし、破たんの無い卓越した文章構成力が素晴らしいと思いました。しかしながら、このネタの場合、ビジュアルの補足があった方がより物語を際立てさせることも事実としてあり、今回の選考ではやや不利になった作品かと思います。筆者の才能には期待したく思いますので、次回作を早く読んでみたい気がします。

鈴木一智 (取締役・第2編集部 統括編集長)
ツボを押さえたキャラメイクとダイナミックなストーリー展開で読み手のハラハラドキドキをストレートに喚起してくれる作品です。審査基準によって順位が容易に変動してしまう状況だった今回、“最も冒険活劇していた”という明快なアピールポイントがこの作品を金賞に導きました。キモである「ノートルダムの凱旋」に纏わるネタが少し弱く、個性的なSF設定を活かし切れていない部分もありますが、執筆センスを感じさせる魅力的な作品世界は秀逸でした。

プロフィール
関東生まれの日本人。背丈と声と態度は大きいが、気は小さい。デルフトの巨匠フェルメールに心酔し、パリを駆けるアルセーヌ・ルパンに惚れ、ロンドンの芸術家バンクシーを敬い、ドイツ語も話せないのにウィーンへの移住を夢見る。節操のなさはワールド級だが、実際は極度の内弁慶。現在は株価に一喜一憂しながら、栄養ドリンク片手に残業の日々を送る、下っ端会社員。

あらすじ
人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている──。

統一された政府により、様々な芸術が規制を受け始めた世界。 しかし、そんな世界各地の壁面に封印されたはずの名画が描き出される事件が起こる。

『Der Kunst Ihre Freiheit!(芸術に、その自由を!)』

絵とともにそう書き残していく <アート・テロリスト> を、人々は敬意をこめて 「破壊者(ヴァンダル)」 と呼んだ。

政府を敵に回すという危険を冒してまで、彼らが絵を描く理由とは。 そして真の目的とは──?



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