第15回 電撃大賞 入賞作品

銀賞
「東京ヴァンパイア・ファイナンス」
作/真藤順丈 (東京都)



受賞作品

電撃文庫

東京ヴァンパイア・ファイナンス

狂騒のハードスケジュール群像劇!

著者  : 真藤順丈
イラスト  : 佐々木少年
定価  : 578円(税込)
発売日  : 2009年2月10日
備考  : A6判/312ページ
ISBN  : 978-4-04-867519-2




選考委員選評
高畑京一郎
個々のシーンの見せ方や小ネタの数々が、非常にうまい。それぞれのエピソードの落とし方も面白かった。この作品の主人公は、万丈小夜あるいはヴァンパイア・ファイナンスそのものであって、四つのエピソードの語り手たちではないと思うが、その肝心のヴァンパイア・ファイナンス(およびその母体である夜を創る会)の目的と立ち位置がどうにも判然としない。そのため、読み終えた後、どうしても据わりの悪さが残った。

時雨沢恵一
平行していくつもの話が進むので最初はかなりとまどいましたが、トーナメント戦の試合表のように、幾多の話が一つにしゅしゅしゅと収縮していく展開が気持ちよかったです。数々のエピソードを勢いよく読ませてくれた文章力も高く評価します。個人的には、老人達の復讐のくだりが一番痛快でした。

佐藤竜雄
暴力的で現代的。そんな短編の連なりが最終的にヒロインの行動原理の謎に触れていくのかと思いきや、尺が足らずに最終回、みたいな感じになってしまって残念。ヒロインの暴力性は魅力的。謎の組織やヒロインとそのスポンサーの関わりが駆け足だったのがあたかも70年代のドラマっぽい感じ。手慣れた感じがする分、そこも計算だったのか?

豊島雅郎
個人的には、今回の候補作品群で一番萌えた作品です。プロットのセンスや映像を想起させる文章力には、特に卓越したものを感じました。極めて 「電撃大賞」 的な作品ではないかもしれませんが、現代のノワール文学を牽引する新しい才能だと思いますので、他の出版社さんに負けないよう、アスキー・メディアワークスさんには頑張って囲い込みをしていただけたらと……(笑)

鈴木一智 (第2編集部 部長・統括編集長)
登場するキャラ達が総じてどこかヘン(笑)という個性的なキャスティング。彼らが繰り広げるバラバラな話が収束していく構成で興味深く読ませます。ただ全体にネタを盛り込み過ぎて、エピソードの一つ一つが小さくまとまってしまったのが非常に惜しい。とはいえシニカルかつ荒唐無稽なオムニバス・ストーリーをひとつの物語にまとめ上げた筆力にストーリーテラーとしての優れた資質を感じました。

プロフィール
1977年東京都生まれ。大学卒業後、ウェブ動画コンテンツ制作や演劇収録のオペレーター、映画制作現場の助監督や製作助手など、フリーの映像制作作業で生計を立てるかたわらで、小説を執筆。2005年ごろより小説に専念する。2008年、『地図男』 で第3回ダ・ヴィンチ文学賞<大賞>を受賞。続いて 『庵堂三兄弟の聖職』 で第15回日本ホラー小説大賞<大賞>を、『RANK』 で第3回ポプラ社小説大賞<特別賞>を受賞する。

あらすじ
真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする『090金融』 ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。今夜も獲物=融資客を求めて蠢く。

デート終わりの送りオオカミをめざす日野健壱。性転換手術をしようとしている大田美佐季。振り込め詐欺グループに復讐を目論む 『やえざくらの会』 の老人たち。ドラッグ・デザイナーを辞めたがっている濱田しずか。

都会のアンダーグラウンドで息する彼らは小夜に出会い、融資をうけるかわりに自身の問題に首を突っ込まれまくる。

そして、債務者それぞれ衝動や欲望をフルスロットルにし、ひしめきあって無限に増殖するのだった──!



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