| 選考委員選評 |
| 高畑京一郎 |
複雑な構造のストーリーに挑戦し、それを破綻なく描き切った作品。二重世界ならではのシチュエーションや、障害の突破方法なども面白く、随所でなるほどと思わされた。逆に勿体ないなと思ったのは、時間を超えてまでこちらの世界にやってきた一哉に、見せ場がない点。全編にわたって張り巡らされている伏線についても、有機的に機能しているとは言い難く、折角の効果が半減してしまっているのが惜しい。
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| 時雨沢恵一 |
今回の選考で、個人的に最も好きになった作品です(“時雨沢恵一賞” を、いらないかもしれませんが勝手に差し上げます。なお、賞金はありません)。細かな謎出しと解決をテンポよく繰り返して飽きさせない展開と、細かなところまで徹底的に練り込まれた伏線や設定は参考にしたいくらいです。ペンネームがその日(電撃大賞応募〆切日)における決意表明のようなものでしたら、感嘆を捧げます。本名でしたら、とても御免なさい。
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| 佐藤竜雄 |
王道と言えばこちらもある意味王道。平行世界という異界に加えて、隣の高校、隣の学区という現実の異界の組み合わせが主人公達の若さとひたむきさをより際だたせていたなと。ある小道具を仲介とした、彼と彼女の関係のもどかしさはなかなかよかったと思います。違うけど同じ世界、という矛盾を旨く使ったアイディアも随所に見られていたのですが、ラストを先に考えたのでしょうか。恋人がピンチの時に黙って見ている少年の心境たるや如何ばかりか。
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| 豊島雅郎 |
『タイム・リープ』 ものとして、審査員の高畑京一郎先生の手厳しい評価をかいくぐっての今回の金賞受賞、これも大した才能だな、と(笑)。設定は個人的に好みでしたし、破たんの無い卓越した文章構成力が素晴らしいと思いました。しかしながら、語り口が普通すぎてやや勿体ない!? と思ったのも事実です。次なる野心的な作品が、早く読んでみたい才能であることには間違いありません。
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| 鈴木一智 (第2編集部 部長・統括編集長) |
選考委員である高畑京一郎先生の名著 『タイム・リープ』 を彷彿とさせる作品。実は私はその担当編集だったため、幾らか辛目の評価になってしまったのは否めません。特に綿密な計算の基に練り上げられた 『タイム〜』 に較べ、ロジックや伏線の甘さが気になりました。しかしながら本作はそのハンデを跳ね返すだけの魅力的な作品性を備えていたと思います。殊に先を読み進ませる構成力は絶妙でした。
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