| 選考委員選評 |
| 安田均 |
平安朝めいた時代に、化生と呼ばれるバケモノを抑える役に就いた少女の物語。キャラクター間の文章や背景の雰囲気は見事に描かれていて、問題はまったくない。ただ、あまりにも前半が丁寧に描かれ、やや読んでいて間延びがした。一方、後半の展開はおもしろいけれども、今度は性急にすぎる。バランスのとれた構成が課題だろう。
|
| 深沢美潮 |
旅先でこの作品を読みました。切れ切れに読んだというのに、いったん文字に目を落とすと、すぐその世界に入れるんです。これはすごい。凜とした朝の空気や松明の火の粉、化け物に右往左往する人々など、映像のように浮かんできました。ただ、後半からの畳みかけが、畳みかけではなく「広げた風呂敷を大あわてで畳んでいる」ような印象を持ちました。ストーリーも説得力がない。でも、これだけの力がある人なら、きっとすごい作品に仕上げてくれることでしょう。
|
| 高畑京一郎 |
とにかく、弓射に関する一連の描写が見事。日々の訓練の様子にもリアリティがあるし、火目候補生達の弓射の凄まじさは、ビジュアル的にも感覚的にも圧巻。文体は基本的には重厚なのだが、女の子の台詞だけ現代語調になるので、違和感を覚える。また、作者の都合で登場人物を操作しているのが透けて見えてしまう場面が、いくつかあった。最後の落ちに関しては、犠牲が多過ぎただけに、どこか釈然としないものが残る。
|
| 佐藤辰男(小社代表取締役会長) |
化け物に母を食われた少女が、復讐のために、一心不乱に弓の訓練を積む。その一途で内気な少女の成長物語だとおもえば随所に優れた描写があり、少女の心のひだに分け入った分析もあって、楽しめる。弓の対決に敗れたり、化生退治に失敗して自分の非力を知るといった描写がむしろうまい。それだけに、化生とそれに対峙する組織の理屈や、最後のあまりに急なおどろおどろしい展開などがあまりに作り物めいて見えてくるのが残念。
|
| 鈴木一智(電撃文庫編集長) |
古代の日本のような世界観は最近の応募作としては珍しいものではありませんが、怪物との闘い、火目候補たちの友情と謀略、火目の血と世界に秘められた謎等々、様々な要素を織り込む事で奥行きのある物語となっています。手堅い文章で丁寧にシーンを描写する姿勢にも好感が持てます。その書き込みが終盤まで持続しなかった事が惜しまれますが、哀しくも透明感のある不思議な読後感が残った作品でした。
|