| 選考委員選評 |
| 安田均 |
ほのぼのとした田園ファンタジー。剣も魔法もほとんど関係しない。それでいて、主人公と狼神のやりとりや、事件の展開には、エピック・ファンタジーの香りがするという異色作。主人公が商人で、テーマに経済ファンタジーという視点をもちこんだことが成功している。今回の事件が小粒で、物語の大枠の一部にすぎないという意見もあるが、こうしたタイプは徐々に発展していくのが基本。ストーリーはきっちり収まっている。
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| 深沢美潮 |
ファンタジー風であるのに、剣や魔法ではなく、商売の世界を描いたという点で大変個性的な作品です。キャラクターも大変よく描けていて、彼らの仕草や表情を見ているように感じられました。惜しいのは、その文体。饒舌な言い回しが多く、フレッシュさがないような気がします。たしかに商売の話がメインですが、読者の興味はそこになかったりするんです。もっとシェイプして、説明も簡潔に興味をひくよう工夫してみると、見違えるような作品になると思います。
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| 高畑京一郎 |
登場人物たちの日常描写に説得力があるので、世界全体が生き生きとして見える。主人公の旅慣れた感じ、行商人としての抜け目無さも、よく描かれている。だが、このお話はホロの旅の物語でもあるわけで、その終着点まで書いて初めて作品として完結するべきもの。旅の途中で一応の区切りをつける手法もないではないが、ミローネ商会の一件は区切りとするには小粒過ぎた。そのため尻切れとんぼになってしまった感が抜けない。
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| 佐藤辰男(小社代表取締役会長) |
貨幣経済が浸透し始めて、田園(=荘園)世界と都市をつなぐ商人が活躍し始めるなんとなくヨーロッパ中世的背景。教会が世俗的な権威を振りかざして、あぶりだされるように土俗的な豊作の神様が現れて、それがなぜか狼の化身のかわいい娘で、若い商人と旅をすることになる。この世界背景と、ギミックとして使われる為替や先物の話がこの作品をとてもユニークな色に染め上げている。飛び切りいい女狼のホロは、いわゆる萌系でなく一昔前の金髪プレイボーイ系。
こういうキャラが良い、といったら、深沢委員にオヤジだと一蹴されてしまった。
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| 鈴木一智(電撃文庫編集長) |
RPG的な世界観ながら基本的には商人たちの知恵比べをネタにしており、少女ホロのキャラクターも独特のセリフ回しと性格付けで非常に印象深く、大人のファンタジーといった雰囲気の物語に仕上がっています。我流のわかりづらい文章表現もありますが、年齢を考えるとこの筆力は驚くべきものがあります。テンポで読ませるタイプではなく内容そのもので読者を惹きつける力を高く評価しました。
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